日本環境感染学会が実態把握に乗り出したのは1999年からである。アメリカ合衆国や欧米では、約20年前から院内感染対策の研究機関を組織して、調査・研究が進んでいる。
例えばStudy for the Efficacy of Nasocomial Infection Control (SENIC、院内感染対策に関する研究) という機関があり、調査は毎年継続され、予防対策についても常に最新の方法・技術が導入され、研究・改良されている。日本では、急速に研究は進んでいるが、対策についてはまだ十分であるとは言えない。
2006年6月に公表された埼玉医科大学病院における多剤耐性緑膿菌 (MDRP) による院内感染事例では、
初めにICUで感染が広がり、その患者がICUから一般病棟にMDRPを持ち帰った結果、感染が拡大したこと
感染経路については、他の耐性菌と異なり、固形石鹸や手洗い場・シャワー等湿度の高い場所や尿を介しての繁殖・伝染であること
抗生物質(カルバペネム等)の使い過ぎにより緑膿菌が薬物に対して耐性を獲得したこと
などが明らかにされている。
病院の建築設計では、院内感染の防止のため、動線の交差を避ける配慮が推奨されている。感染や事故につながる廃棄物等の運搬経路は、患者動線と完全分離することが望ましいとされる。すなわち、患者の行動領域がバックヤードと切り離されるように設計される。
動線(どうせん)とは、建物の中を、人が自然に動く時に通ると思われる経路を線であらわしたもの。建物の間取りを設計する際に気をつけなければならない。設計の際に利用者の行動パターンを予測し、より明快に、また移動距離が長くなりすぎないように平面計画を練る。設計において動線を特に考慮することを 動線計画という。
動線計画は、目的によって「なにを重視するか」が変わってくる。実際の設計で考慮される要素を以下に例解する。
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交差
異なる動線が交わることである。たとえば病院などでは、動線の交差を極力なくすことが利便性の向上・事故や院内感染の防止・機密の保持などにつながる。また、デパートで客の目の前をせわしなくスタッフが行き交ったり商品が頻繁に搬送されるようなことは避けるべきであるし、テーマパークで裏方が露出しては興醒めである。その一方で、学校や住宅などでは、敢えて利用者同士が対面しやすくする場を設けることでコミュニケーションを円滑にするなどの工夫もなされる。
長さ
利用者の移動する距離のことである。たとえば病棟であれば、看護スタッフの動線(看護動線という)の長さを短く設計することで、一日に何十何百室を歩いて訪れる負担を軽減したり、ベッドや大きな医療機器などの移動が頻繁となることが予測されるならば曲がり角を減らすなどの工夫がなされる。一方商店などでは、客が移動の過程で多くの商品の前を通り購買欲を起こすよう、動線を長くとることもある。
明快さ
不特定多数が利用する場合には、初めて訪れても迷わず目的を達成できるように (サイン計画などとも合わせ) 系統だった誘導を心がけるべきである。原広司設計の札幌ドームの動線は明快だと言われる。